silky drifting snow [touren]
地上と大空を結ぶ 「天空の飛行場」
標高402mに位置する800m×25mの滑走路は、空と大地をシームレスに繋いでいる
---------- そこは、まるで Pilot と Driver の聖地だ
ブルーグレイの空の色、風向き、気温、流れる雲間から差し込む光、すべてが刻々と変化していく・・・
頬を撫でる冷やりとした感触に、いつの間にか羽毛が舞うような軽い雪が、滑走路に優しく降り立つ様に気付く
素朴な原風景の中に優しく舞い落ちる、春の色に微かに染まった雪が滑走路の静寂を増す中、400mの彼方からsilkyなエグゾーストノートがクレッシェンドしてくる・・・
間もなく眼前に映るのは、2機の美しいダンスだ ----------
春色の雪が地上に捕らわれる寸前に空へと逃すように、リアから舞いあげながら疾走する ALPINA Roadster と PORSCHE Boxster
メルボルンレッドとアルピンホワイトの色乗りを象徴するような、AKRAPOVICの確かな低音に支えられた空気を振わすサウンドノートと、鮮やかな対比を魅せるSACLAMのハイノート
ラテンのフレイヴァーが色濃く薫る Lutécia Renault sport と、ブリティッシュスポーツの佇まいに精密感のあるサウンドノートを纏う MINI Cooper S
ブルーグレイの空に映える ALPINA bläu のB3Sと、滑走路がまるでサーキットのイメージに投影される、スパルタンで艶やかな漆黒の B3S
そして、既にスポーツカーの一つの規範にまで到達した、揺るぎ無いRRコンセプトを象徴するセクシーでグラマラスなリアセクションから独特なサウンドノートを響かせる Type997 Carrera と、エンジン屋の気概を存分に感じさせる高回転型VTECをフロントミッドに積む S2000
エグゾーストのハーモニクスが美しく大地に反響し、そして天空に解けて行く・・・
滑走路から再び上空に舞い上がる春色の雪は、天空から俯瞰すれば、まるでハーモニクスを形成する音符がメロディを紡ぐように、優しく弾みながら滑走路にダブる五線譜のline上に連なっているようにも見える
やがて、レヴリミットまで極まったエグゾーストがデクレッシェンドしつつある中に聞こえてくるのは、少年のように興ずるDriverたちの笑い声
---------- 外気温の低さと吐く息の白さを感じさせることのない、とても暖かな響きだ
天空が、聖地が、美しいエグゾーストと、雪の音符の舞いと、そしてDriverたちの笑い声に包まれる・・・
ここに来れて、再び福島を訪れることができて、嬉しく思う
頬を優しく射す雪の冷たさが、心底の温もりを、その対比の中で一層感じさせてくれる
翌朝、市街地にも舞い落ちる春雪をフロントグラスで受け止めながら、東北道を南下して行く・・・
ブラウンの MINI Cooper Sが、ピアノブラックのような艶やかでシックな漆黒の ALPINA B3Sが、バックミラーに映り、そして右舷を抜けて行く
デュエットを楽しみたい気持ちとは裏腹に、高速とは思えないようなアンジュレーションを未だ抱えている路面状況が影響し、ワインディング用にシビアに調律した足回りからリニアに伝わってくるセンシティブなステアフィールが、その想いを阻む
そしてまた、ALPINA bläu のB3 3.3 が、同じように、映り、抜けて行く・・・
「こうやって並走できるのも、また1年後になってしまうかも知れない・・・」という思いのジレンマが、アクセル開度を少し大きくする
間もなく郡山ICが近づき、B3 3.3 が追い越し車線から走行車線に移り、スピードを落としていく
と同時に、最後にもう一度並べるようにとガスペダルを踏み込んだ眼前に飛び込んできたのは、スライディングルーフを開け放ち、右舷後方を巡航する私にはっきりと見えるようにと、上部から大きく振られた手
彼の地の人たちは、どうしてこんなに温かいのだろう
彼の地を訪れる度に思う
---------- 勇気づけられているのは、寧ろ私たちであるのだと
春色に染まった優しい雪が美しく舞う天空の飛行場は、FSPDというキーワードとともに、そして福島の人々の温もりとともに、「彼の地の春」を心底に願い刻む、その象徴となった